○宇治市環境保全基本条例

昭和51年7月15日

条例第29号

めざましい科学の進歩は、人間生活に物質的な豊かさをもたらした。しかし、今日までの産業経済と都市の急激な発展により、人間の行動圏の拡大と生活様式の変化およびこれらに伴う社会的価値感の変化が生じ、人間と自然との結びつきを破壊し、また、人間同志の暖かい心のふれあいが奪い去られつつある。

宇治市民は、従来、緑と水と山なみに囲まれた豊かな土地で恵まれた自然環境、歴史的環境を生活にとり入れ、良好な環境を築いてきた。しかし、人口が急増し、急激な都市化現象を呈している本市において、自然の生態系を乱す公害、都市生活の場・居住の場の未整備、人間関係における連帯感の疎外など諸種の弊害が生じ、それは拡大の傾向にある。

市民は、健康で文化的な生活を享受しうる権利とともに、良好な環境を保持する責務を有する。

いまや良好な環境を保全し、確保するためにあらゆる努力が傾注されなければならない。

ここにわれわれ宇治市民は、自然と調和のとれた環境の創造を都市づくりの理念とし、「みどりゆたかな住みたい、住んでよかつた都市」の実現をめざし、市、事業者、市民がその力を結集して環境問題に対処し、「明るく健康なまち」を未来に継承することを誓い、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、市民が健康で安全かつ快適な生活を営むための良好な環境の保全およびその確保に関する市長、事業者および市民の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定め、その推進をはかることにより、市民の福祉の増進を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「良好な環境」とは、市民が健康で安全かつ快適な文化的生活を営むことができる環境をいう。

(市長の責務)

第3条 市長は、良好な環境の保全および確保に関する総合的な施策を策定し、およびこれを実施する責務を有する。

(事業者の責務)

第4条 事業者は、その事業活動により良好な環境をそこなうことのないように努め、自らの責任と負担において必要な措置を講じるとともに、市長が実施する良好な環境の保全および確保に関する施策に協力する責務を有する。

2 事業者は、法令等の規定に反しない場合または定めのない場合においても、周辺の自然的、社会的条件に応じて良好な環境をそこなうことのないよう最大限に努力する責務を有する。

3 事業者は、良好な環境の保全および確保に関して協定を締結するように努める責務を有する。

(市民の責務)

第5条 市民は、その日常生活において良好な環境の保全および確保に関する意識を高め、相互に協力して地域の良好な環境をそこなうことのないように努めるとともに、良好な環境を保全し、確保するための市長の施策に協力する責務を有する。

第2章 環境基準の設定

(環境基準の設定)

第6条 市長は、良好な環境を保全し、確保するために維持されなければならない環境上の基準を定めることができる。

2 前項の基準については、常に適切な判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。

第3章 環境保全計画の策定

(環境保全計画の策定)

第7条 市長は、良好な環境の保全および確保に関する施策を総合的かつ計画的に講じるため、環境保全計画を策定しなければならない。

第4章 良好な環境の保全および確保に関する基本的施策

(良好な環境の保全確保の施策)

第8条 市長は、次の各号に掲げる事項に係る施策を策定し、良好な環境の保全および確保に努めなければならない。

(1) 緑化の推進、樹木等の保全、野生動植物の保護その他自然環境の保全および確保に関すること。

(2) 良好な環境の確保に係る公共的な施設の整備に関すること。

(3) 事業活動その他人の活動に伴つて生じる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態または水底の底質が悪化する状態を含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、悪臭および地盤の沈下(以下「公害」という。)の防止に関すること。

(4) 無秩序な土地開発等の行為の規制および日照等の確保並びに合理的な土地利用に関すること。

(5) 宅地化された空地その他空閑地に係る環境衛生の維持並びに工作物の規制等による風致の確保に関すること。

(6) 廃棄物の不法投棄の防止および都市の清潔保持に関すること。

(7) 歴史的・文化的遺産の保存および史跡名勝、景勝地の整備に関すること。

(8) その他良好な環境の保全および確保に関する諸施策

2 市長は、前項各号の施策とあいまつて地域住民の連帯感に支えられたコミユニテイの形成のための条件整備に係る施策を策定し、およびそれを実施しなければならない。

(公聴会の開催等)

第9条 市長は、前条に規定する施策を策定するため必要があると認める場合には、公聴会の開催等市民の意見を反映するために必要な方途を講じるものとする。

(監視・測定体制の整備)

第10条 市長は、良好な環境を保全し、確保するために必要な監視および測定の体制の整備に努めるものとする。

(報告および調査)

第11条 市長は、事業者、土地または建築物の所有者もしくは管理者(以下「関係者」という。)から良好な環境の保全および確保に係る対策その他必要な事項について報告を求め、またはその職員に当該工場、事業所、土地もしくは建築物等に立入らせ、施設その他の物件を調査させることができる。

(指導・助言・勧告および命令)

第12条 市長は、良好な環境の保全および確保に関し、関係者に対して必要な指導、助言、勧告または命令をすることができる。

(協定の締結)

第13条 市長は、良好な環境の保全および確保に関し、関係者および市民と協定を締結することができる。

第5章 審議会

(審議会の設置)

第14条 市長は、良好な環境の保全および確保に関する事項を審議するため、宇治市環境保全審議会(以下「審議会」という。)を設置するものとする。

2 市長は、次の各号に掲げる事項を審議会に諮問するものとする。

(1) 環境基準の設定

(2) 環境保全計画の策定

(3) 公害の予防対策および被害対策

(4) 良好な環境の保全および確保に関する協定の締結

(5) 大規模な開発行為等に対する環境保全対策

(6) その他必要と認める事項

3 審議会の組織および運営に関し必要な事項は、別に定める。

第6章 雑則

(氏名等の公表)

第15条 市長は、第12条の規定による命令に従わない者については、審議会にはかり、その氏名および住所(法人にあつては、その名称および代表者の氏名並びに所在地)並びに命令の内容等を公表することができる。

第16条 この条例の施行について必要な事項は、別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

宇治市環境保全基本条例

昭和51年7月15日 条例第29号

(昭和51年7月15日施行)